嵐牛 蔵美術館      RANGYU MUSEUM OF ART

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春 之 部

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  俳  句

春 之 部

 

 

けふの初日誠に今日の初日哉

かゝやきをおうて出かゝるはつ日かな

草の戸も火打ならして明の春

織て着てつくりて喰うて御代の春

行灯をけすひと吹や去年今年

継子とは継子もしらすきそはしめ

田作やなまくさめかぬからひやう

尾をすそのこゝろてひくか嫁か君

ひと日つゝ立やたしかに三ヶ日

笑う家は問も入よし松かさり

喰つみも鼠まかせの庵かな

大根のきさみ膾や蔵ひらき

客つれてうかれ女のつむ若菜かな

春の夜や酒さめこゝら人の家

夜あらしをともに侘うそ子の日松

朝川や梅にむかうて歩行わたり

村中へ咲うつりけ里うめの花

大家のあひの小家や梅のはな

来るほとの日かめてたくて梅の花

広き野の朝日に梅のひと樹哉

ひと月の須磨の仮屋にうめの花

梅か香にかとのとれたる月夜かな

薄月や梅ちるころの嵯峨もとり

髭つらの口先にくしうめのはな

梅のはなぬすませておく夜は月夜

水けふるうへに夜明の柳かな

隣から雫をにくむやなきかな

遅かれとおもふ灯見ゆる柳かな

鶯や声をまろめる口のうち

 

 

うくひすや近うて鳴ても折目高

黄鳥と枕はちかし草の庵

木戸おせは雉はしり出る軒端かな

子供達の耳にも入りぬ御忌の鐘

 鶏の口踏て来るよかんかな

包丁に餅うち砕く余寒かな

鶯のうちへ舞いこむよかんかな

かふかふと夕波よする霞かな

ほくほくと田槌の音や遠かすみ

東風ふくや遠くなかれて鳴かもめ

正月のもの喰う庵の二月かな

過た日のことはかりする二月哉

わすられぬ時也日也西行忌

苗代やとうならへても色紙形

万歳や岡崎を出頬かむり

 (すき)そめや遍屈(あまねくつ)いひを先にたて

蓬莱に敷居五寸のへたてかな

とろとろする音に果けり店おろし

馬士に聞はとんとや遠明り

客は皆孫なり子なり梅の花

見て居るに相人のいらぬ柳かな

横雲のはしから見ゆる柳かな

鶯や遊行の川の四ツ下り

きし啼や日は真直に笠のうへ

てふてふや己か羽風に吹れ行

千金はもとの価そはるの宵

 朧夜(おぼろよ)や冠てもとる獅子かしら

 


 

 

 

 春の水ひよひよ草のうへを行

畔をぬる音や朝寝の垣の外

雁鴨の見かきる水や芦の角

さほ姫に袖はなきやら花に風

深山木のさひしさひくや遅桜

春をしみをれは灯ともる江越かな

とほれとは嬉しすみれをふむ山路

火を焚たきのふのあとも春の草

いさめせと膝をる鹿やはるの草

てふてふよ人にしらする此日和

蝶よりもやすき眠りや鞍のうへ

うれしさをかくさぬ蝶の羽振かな

くらかりに飛腹しろき蛙かな

雨夜から口はやになる蛙かな

一はいのちからを水に飛かはつ

ふりかえる細みもあるや猫の恋

うかれ猫婢の箒くらひけり

橋桁やあそひこゝろに飛つはめ

ゆふ乙鳥我は立へき軒もなし

似我蜂は巣も子もおのかものてなし

さほ姫の織たあまりか滝の糸

何日ともおもはて見るや春の月

清水の連歌すみけり春の月

野をもとる公家の馬上やはるの月

鶴啼や江は東雲のおほろ月

日和さへよけれは吹やはるの風

てらてらと日南をゆくや春の水

笹くゝり来るやさらさらはるのみつ

御留場の鶴ふえにけり春の雨

合宿の鳥屋は起ぬ春のあめ

 

 

紙鳶くれて繋き柱にひゝきけり

 丸々とうちとけ顔や紙ひゝな

雛ひとつそふや棄子のまくらもと

綾にしき入日の漁やなかし雛

はつ花や出れはおもはぬ事はかり

夜はよくも明すほちほち花の露

来るほとの人かいふなり花さかり

焚つけにしら箸をるや花のかけ

ちる花やされは昨日のからす啼

水しまぬ花なかれ来る日和かな

花に来れば達者と人にほめらるゝ

裾におかはあたゝかさうに花の雲

 

  

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