嵐牛 蔵美術館      RANGYU MUSEUM OF ART

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俳  句

夏 之 部

卯月野や老をはりあふきし雲雀

よき水の遣ひたき日やころもかへ

家中にきけんとられて更衣

小法師の横川出て来る袷かな

はしちかく嵯峨なと見えて青すたれ

又しても仮に生まるゝ仏かな

とちへ膝むけて待うそ不如帰

うら切りのむかしのすちを蜀魂

輪蔵や女の声の若葉もる

墨色や猶ゆくすゑのいく若葉

宮守の錆錠たゝく茂りかな

水かけに藤ひとふさや木下闇

桜の実拾ふやそれもやかてあく

菽うゑや船もかよひし泓のあと

卯の花や道々ありて折おくれ

桜見しこゝろしつまるほたにかな

剪たさをけさもこらへる牡丹かな

ちるけしやおもかけにたつ一法師

草の戸も浮世めく日やはつ鰹

門並に堅魚きる火や夜もすから

今朝もまた水にあるなり夏の月

夏の夜は常よりちかき隣かな

雫ちる軒に端午の朝日なり

門立も薬ふる夜のかことかな

つくる手の合せこゝろやかしはもち

打ち水のちる音やなかき小笠哉

蟻の出るはしら払うて更衣

綿ぬきや貧しき中の余りもの

ほとゝきす待やをさなく覗く窓

打揖や走り遣ひかほとときす

葉さくらやふり込形の椽のあめ

雨せうせう闇の若葉も覗きたき

柿の木の接木伸けり麦の中

麦かりや笠にふせおく雉子の雛

朝夕にこゝろふたつや五月あめ

野をてられ来て下かけの杜若

雁に似た並ひやうする田植かな

己のみくれるこゑなりかんこ鳥

青鷺やひと足つゝに一ト思あん

身をうつとしらてむかひし印地かな

飛咲のひとつすくれてかきつはた

砂川も薄いろ時やあやめ草

車にもあやめほしけや夕けしき

いつはりの露にもぬるゝあやめ哉

麦秋や雲よりうへの山ひより

ものにさはる音してちゆる竹の皮

常盤木の常のしつかを落葉かな

柿のはなちるや蛙にぬるゝ庭

月まてもしたゝる山の夜明かな

とりくちを明るもをしき早苗かな

こほすともみゆる田植の手もとかな

庵にもひと日はほしき田うゑ哉

植る田や神のをしへのまゝらしき

苔咲もしらておはすや膝廻り

葉わらひをかむ歯はしろき二人哉

さみたれや鹿伸あかる草の中

鹿の乳にこゆるゝ軒や五月雨

あさはかな蝶の寝くらやさつき雨

入梅しほの濁りもよせす鯛の紅

庵の夜や水鶏かなけは水鶏の夜

また鳴とひとりおもふやかんこ鳥

いつも図にのった声也行々子

昼の灯に蝙蝠まよふ御堂かな

初蝉のたゝ一日にふるひけり

蝉のすふほとも風なし古榎

今朝はゝや塵に掃れて火とりむし

てゝむしや垣越うともせぬしつか

月花に舞た扇や蝿たゝき

ねらひ狩得たりの声そいさましき

帆に風を薫らせかよへ西ひかし

軒かれはあるし戻りぬ夏の雨

のしむくや蜑にも清き業は有

裏おもて有とは見えず絹うちは

我ものにせは水無月の夜明哉

鹿かりや祭のいみのあらひ髪

石菖や取いく風のやゝたもつ

ひと樹つゝ風のなきゆく夏野哉

伐た手にくるりと撫つ瓜の砂

泊瀬をかむ隙もをしみて瓜つくり

ゆうかほやひとりこゝろの二人住

夕顔にのそかれにけり古女房

よしもなく立日うれしき暑かな

涼しさや筆とる事もなき独

里の名を聞てもすゝし此あたり

くめといふ清水もほそき隣かな

牛はくち鳴らして戻るしみつかな

何聞うとてか清水にあらふ耳

春夏もかはらぬ苔のみとりかな

ひゝやりとひと風うけて御祓哉

  

 

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