嵐牛 蔵美術館      RANGYU MUSEUM OF ART

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俳 句

秋 之 部

  立秋や膳は茄子のひと夜漬      

はつ秋や起てよいかと見に起る

星にさへ今宵はあるをわひまくら

ひとゝせの夜か明る也あまの川

稲つまや月夜の闇をくゝりゆく

稲妻や子はふところに高鼾

鬚髭もつくりて木曽の踊りかな

我老を人に見られて魂むかへ

袖の露今を未来と見る世かな

秋かせの衣をとほすゆふへかな

秋風や狩倉すみし山のあれ

梟の親にせまるや秋のかせ

鏡にも吹入にけり秋の風

葉のゝちは枝もこほるゝ柳かな

灯に来れは風に成けりをきの声

けふり見るまての隣やすゝき原

さわついて秋のこたへぬ芒かな

葉のもつれ穂に伸分るすゝき哉

をみなえし馬は麁相をのかれけり

秋風か吹そよふくそをみなへし

おもふことうたふに似たり鳴蚯蚓

いつそ我ふとんへはひれきりきりす

きりきりす啼て嬉しき夜もあるか

後の世はともに鳴うそきりきりす

こゝろにはわらふもしらすきりきりす

雨風に身はすてはてゝ父恋し

蟷螂の己か羽をかむいかりかな

ひくらしの寒い夕へにしたりけり

三日たては三日月のある葉月かな

見処を譲て退くや二日月

木かくれてひらく明りや三日の月

帰り来て戸あくる庵や初月夜

くらかりもほしきほと也舟の月

月の空清めんとてかはゝき星

世に出れば月にも雲とさすか

月待やふくへの首も空をむく

めい月の下に更たる大河かな

野のすみも山の端もなしけふの月

満月やひとかさあかる湖の水

放生にあたふ鳩なく月夜哉

木かくれをきのふは侘びて今日の月

おもかけや月に無言のうしろつき

いさよひの闇わけのほる小笹かな

残月や水へ吹こむ砂の音

不二すむや月も亥中を過るかせ

きのふまてとらへたものを放生会

贄櫃のうつしはうくや秋の水

我のみと人もおもふか秋のくれ

かたみ子をふところにうつ碪かな

山姥もうつか月夜の遠きぬた

よき空や便舟もらふ稲のうへ

闌やすき日かけをもちて秋海棠

曼珠沙花狐の聟のかさし哉

百舌の尾や遠眼たのしむ捻りふり

鳴すてし口綺麗なるうつらかな

鴫の行かふの岸もゆうへかな

宿なしの鴫にもおとる夕へかな

初雁やたもと軽しとおもふ朝

 

かなしさは雁にもならぬ使かな

ひく先に夕雲かゝる鳴子哉

うそ寒や座敷子僧の消たあと

朝寒や喋の羽浮し遣ひ水

朝寒やおもひ廻せは苔の下

おもふことなくて目覚て夜寒かな

一棒にならぬ筆とる夜寒かな

 米くさき酒強られて菊のはな

無筈をあるか塵なりきくの庭

菊の香や末もにこらぬみなと川

ほと過ん雨に庵の菊なます

我眼には黄金也けり柚の黄み

末かれやまた見えぬ日の当る山

焚あとに早火の気なき紅葉哉

日を下に柴橋わたるもみちかな

今にしれぬ命としらて鳴鹿か

鳴しかの咽に吹こむ嵐かな

露しくれ夜はかたよるこゝろかな

わすれよと人はいふ也露しくれ

田畑はもたねとうれし秋日和

しら雲の秋といふへき天気かな

 

 

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